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第10回
女の子の「性」の価値って

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 僕は基本的には雑誌に文章を書くライターという仕事をしているのですが、最近はビデオやデジカメでのハメ撮りの仕事の比重が高くなってきてます。あ、ハメ撮りと いうのは、モデルと一対一での撮影のことですよ。カメラマンが男優を兼ねてハメながら撮る、というわけですね。で、まぁ、今日もそのハメ撮りをしてました。
 相手の女の子は、23歳のキャバクラ嬢でした。ここ数年、兼業モデルがすごく増えてますね。学生やOL、看護婦なんてのも意外なほど多いんですけど、特に多いのが風俗嬢。今のAVモデルの半分くらいは、風俗の仕事もやってるんじゃないかな。
普段はお店で働いて、仕事が入ると休んで現場に行くわけです。純粋にAVの仕事だけやっている子って、あんまりいないんですよね。でもそういう意味じゃ、僕も兼業ライターだなぁ(笑)。閑話休題。
 その23歳のキャバクラ嬢は言うわけです。「お客とは絶対に寝ない」と。
「お客さんとエッチするなんて、考えられないですよ。太もも触られるだけでも、すごく頭に来ますもん。たまにお店でもお客と寝ちゃう子とかいるけど、軽蔑しますよ」
 でも、その子は、こうして仕事で僕とセックスしてたわけです。セックスしながら撮影までされてたわけです。キャバクラでは太ももすら触らせないのに。
「だって、キャバクラでは触らせるのは仕事じゃないもん」
 うーむ。それがキャバクラ嬢のプライド。かっこいいですよね。確かにキャバクラ嬢は触らせるのが仕事じゃない。そして、その同じ子がAVの仕事では、本番はもちろん乱交だの野外プレイだのまでやっちゃう。それはAVモデルの仕事だから。
 なーんか、その辺が男の僕には解せなかったりするんです。それほどキャバクラ嬢のプライドにこだわる子が、なんでAVの仕事ができちゃうんだろう、と。
 キャバクラとイメクラを掛け持ちしてる子もいました。昼間はイメクラで働き、夜はキャバクラで働いているんです。アイドル系の愛くるしい美形ちゃんなので、当然キャバクラでも人気があるようです。彼女を口説くために、たくさんの男がお店でお金を使い、同伴やアフターでご馳走し、プレゼントを贈っているのです。
 キャバクラに通う男の目的といえば、結局のところ、キャバクラ嬢とセックスしたいということに尽きます。デートをして、何とか最後まで行きたい。つまり、彼女とセックスするために何十万、何百万と費やしている男たちがいるのです。
 しかし、イメクラに行けば、わずか1万円強で彼女と(本番はないとしても)性行為ができてしまうのです。いや、別に彼女がキャバクラの客に「昼間はこっちのお店にいるから、来てね」なんて営業かけてるわけじゃないから、よっぽどの偶然がない限り、イメクラにいる彼女を知ることはないんですが、同じ商品が、あっちとこっちでは値段が違いすぎるんじゃないか、と。なーんかね、男としては、というか一消費者としては納得いかないんですよ(笑)。
 その子もやっぱりキャバクラでは、絶対にカラダに触らせないというんです。昼間はどんな客に対しても、シックスナインや素股のサービスをしているのに。しかも1万円強の料金で。
「だって、キャバクラはキャバクラ、イメクラはイメクラだもん」
 そうなんだよね、そうなんだけどさ…(笑)。
 AVや風俗の子でも、セックスに対する意識が、やたらにマジメな子がいます。この仕事を始めるまで、ちゃんとつきあった彼氏としかセックスはしたことがないという子が結構いるんですね。ナンパされて、その日に初めて会ったような男の人とセックスするなんて、考えられない、なんてことを言うんです。
 で、そういう子が、初対面の人と性行為をする風俗やAVの仕事が出来ちゃう。男の僕にしてみれば、不思議でしょうがないわけですよ。
「仕事だって割り切ると、平気なんですよ」
 彼女たちは口を揃えて、そう言います。一度割り切っちゃうと、女の子ってすごいんだよなぁ。
 その辺の考えって、どーも女の子の方がしっかりしてますよね。男の方が「仕事」に対する考えは、グズグズかも。僕なんかでも、ライターの仕事なのに「ここ、ちょっとなんなんでしょうねぇ、こういうのって。

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撮影/安田理央
安田理央(やすだ・りお)
1967年生まれ 埼玉県出身 美学校考現学研究室卒業。
雑誌編集プロダクション勤務、コピーライター業を経て1994年よりアダルト系フリーライターに。得意なジャンルは、風俗、AV、デジタルエロ、マンガなど。現在、『デラべっぴん』(英知出版)、『BUZZ』(ロッキングオン)をはじめ多数の雑誌でコラムを連載中。著書に『OPEN&PEACE 風俗嬢ヴァイブス』(メディアックス)など。またAV監督、デジタルカメラマン、バンドのボーカリストなどとしての顔もアリ。妻子もアリ。