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第6回
勃たない理由

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先日、知り合いのAVモデルからメールが届きました。

「この間の撮影、サイテーだった! 男優が勃たなくて、30分くらいフェラさせられたの。もうアゴが痛くなっちゃったよー」

とりあえず、大変だったねーと返事しておきましたが、僕はどちらかというと、その勃たなかった男優さんの方に同情してしまったんですね。僕も以前は男優のバイトをしていたので、気持ちはよくわかるんです。

いや、ホント、勃たない時の男優というのは、非常にツライもんです。AVの現場では、男優が勃たない時は「勃ち待ち」などといって、撮影を中断して、勃起するまで休憩したりするんですけど、その時の気分といったら、もう針のムシロですよ。撮影の進行が遅れるというスタッフの嫌気、そして「勃たないのは、私に魅力がないってこと?」なんて思っているであろうモデルさんの不機嫌さが、伝わってくるんですね。いや、本当は、そんなこと考えてはいないのかもしれないけど、こっちは気が弱くなってるから、勝手に思い込んじゃうんです。そして焦る。焦るから、更に勃たなくなるの悪循環。

これ、撮影じゃなくて、プライベートなんかでもよくありますね。一度、ダメになっちゃったりすると、そこから回復するのって、なかなか大変なんですよねぇ。

しかし、なんで勃たないかといっても、特に理由がなかったりするもんなんです。相手に魅力がないから、勃たないということは、意外にないもんです。

 僕の個人的な体験でいえば、「あちゃーっ」と泣きたくなるような相手の時の方が、むしろバッチリだったりしますからね。例えば、体験取材で六十ン歳の超熟女ホテトル嬢を相手にした時とか、出会い系サイトでゲットしたトドのような女の子(しかも性格もキツかった…)をハメ撮りした時などは、意外なくらいにちゃんとデキたんですね。

その一方で、美形と評判だったAVギャルと2人っきりでの撮影なんて時に、さっぱりだったりするんです。その子、かなり僕のタイプだったし、ムードもイイ感じだったにも関わらず、十分な硬さにはならず失敗。あれは自分でも不思議でした。

つまり、こういうことだと思うんです。相手があんまり美人だったりすると、緊張してしまって勃たない。その点、「あちゃーっ」という相手だったりすると、これは勃たなくて当然だからとプレッシャーもなく、緊張もしないと…。

だから、勃たないからと言って不機嫌にならないでくださいね。あなたが素敵すぎるから、緊張しちゃったんです(笑)。

 ま、男というものは、女の子が思っている以上にデリケートなものなんですね。プレッシャーというものに非常に弱い。よく言われることですが、女の子は誰でもAVギャルになれるけれど、男優になれる男はごく一部の人間だけなんだと。「仕事」というプレッシャーを背負いながら、人前でしっかり勃てられる男というのは、本当に貴重なんですね。

まぁ、今はバイアグラという便利なものがあるから、ある意味で誰でも男優になれるかもしれませんが。告白すると、僕もハメ撮り仕事の時なんかに、バイアグラ飲むことがあります。若作りしてますが、35歳ですからね、僕も。常にカメラアングルを気にしなくちゃいけないハメ撮り仕事ってのは、集中できなくてダメになっちゃうことが多いんですよ。でも、やっぱよくないですよ、バイアグラ。あれ飲むと心臓はドキドキするわ、鼻は詰まるわ、頭痛はするわ、副作用出まくりですからね。仕事じゃなかったら、飲みたくないものですね。

ちょっと話が反れちゃいましたが、このように男とはデリケートなものなのです。ちょっと勃ちが悪いからといって、責めないでくださいね、仕事でもプライベートでも。

なんて、書いてみましたが、実は男にも変化が起きているような気がするんですね。最近のAVでは、おなじみになっている「ぶっかけモノ」というジャンルがあります。たくさんの男優が登場し、女の子に精液をぶっかけていくという、ある種マニアックなプレイ。その撮影のためには、大勢の男優が必要になるんですが、この射精要員の男優さんのことを「汁男優」と呼びます。彼らは、射精を何回したかでギャラが増減する歩合制。仕事のできる汁男優さんというのは、いつでもどんな状況でも、何発も発射できるんですよ。

目の前に本物のAVギャルがいるとはいえ、何十人もの男に囲まれて自分でしごいて発射しなくてはならない、そんな状況で勃たせるなんて至難の技だと思います。少なくとも僕には絶対無理。

でも、結構たくさんいるんですよ、汁男優さん。もちろんプロフェッショナルと呼べるような人はひと握りなんでしょうけど、そこそこ仕事ができる人も合わせれば、かなりの汁男優人口がいるようなんです。しかも、どんどん増えている。

よく、女の子が気軽に脱ぎ仕事をすることを指して、「女も変わった」と言う人がいますが、どうやら男の方にも変化はあるようですね。

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撮影/安田理央
安田理央(やすだ・りお)
1967年生まれ 埼玉県出身 美学校考現学研究室卒業。
雑誌編集プロダクション勤務、コピーライター業を経て1994年よりアダルト系フリーライターに。得意なジャンルは、風俗、AV、デジタルエロ、マンガなど。現在、『デラべっぴん』(英知出版)、『BUZZ』(ロッキングオン)をはじめ多数の雑誌でコラムを連載中。著書に『OPEN&PEACE 風俗嬢ヴァイブス』(メディアックス)など。またAV監督、デジタルカメラマン、バンドのボーカリストなどとしての顔もアリ。妻子もアリ。