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法的トラブル相談室-第84回-

法的トラブル
お金に仕事に恋愛問題、そんな日常のトラブルを解決する法律のなるほど。後藤弁護士がズバリ解決!

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質問
私が書いたエッセイを自分の作品として発表しているT美。
この、盗作女!
イラスト

  趣味でブログを公開している私。数日に一度のペースで、自作のエッセイをアップしています。でもこの前、同僚のT美のブログに、私の書いたものとそっくりなエッセイを発見。過去の記事を見てみると、ほかにもコピペした私の作品がいくつもあり、どれもT美が書いたことになっていました。これって、盗作では……? 
思い切って、T美に文句を言ったところ、「作家が書いたわけじゃないんだから、盗作になんてなるわけないでしょ!」。自分の作品をバカにされたようで、カッチーン!ときました。人の書いたものを盗むなんて、アリ? ムカつくT美を痛い目に遭わせてやりたい!

(文豪さん/21歳)

・自分のブログに、趣味で書いているエッセイを載せていた
・ 自分の書いたエッセイが、同僚のブログに、同僚の作品として載せられていた
・ 同僚を問い詰めたら、「作家が書いた作品ではないから、盗作ではない」と言われた
質問
他人の作品を
勝手に利用してはダメ

  自分の考えや感情を創作的に表した文芸・美術・音楽などの作品は、「著作物」と見なされます(著作権法第2条)。そして、著作物を管理する「著作権」は作者にあるため、他人が無断で著作物を利用することはできません。著作権は作品ができあがった段階で自然に成立します。権利を得るために特別な申請などをする必要はありません。また著作権は、プロ・アマチュアといった立場に関係なく、すべての人に認められる権利です。
今回のケースでT美さんに使われた「エッセイ」は、作者が感じたことなどを自分の視点から書いたものなので、「著作物」であることは明らか。T美さんのしたことは盗作であり、文豪さんの著作権を侵害したことになります。作者である文豪さんには差し止めを請求する権利があるので(著作権法第112条)、まずはT美さんに、ブログから作品を削除させましょう。また、わざと著作権の侵害をした場合は、罰則もあります。T美さんは文豪さんが書いた複数のエッセイを自分の作品として発表していたわけですから、どう考えても「うっかりミス」とは言えません。文豪さんが訴えれば、T美さんには罰金や懲役が科される可能性もあります。もう一つおまけに、著作物を盗作された精神的苦痛に対して、慰謝料を請求することだってできます。ずうずうしいT美さんに思い知らせてやりたいのなら、まずは文豪さんの権利と著作権を侵害した場合の罰則、慰謝料請求の可能性についてキッチリ説明し、盗作の罪の重さをわからせてやりましょう。

質問
弁護士・後藤法律事務所所長
後藤 邦春

裁判官を15年間務め、1989年より民事専門の弁護士に転身。帝京大学にて法学・労働法の講師を担当するなど、若い女性の「法的トラブル」相談者として活躍中。ペットは猫派。