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法的トラブル相談室-第76回-

法的トラブル
お金に仕事に恋愛問題、そんな日常のトラブルを解決する法律のなるほど。後藤弁護士がズバリ解決!

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質問
店長にプレゼントを贈りまくってチーフになった同僚。
その貢ぎ物、賄賂(わいろ)でしょ!?
イラスト

  同僚のB子は、超・調子のいい女。大して営業成績もよくないくせに、店長にプレゼント攻撃をして、あっという間にチーフに昇進したんです。「店長の誕生日」にはブランドもののシャツ、「昨日フォローしてもらったことのお礼」にはワイン……。プレゼントにはいろいろ理由をつけてたけど、本当は店長に気に入られて、特別手当がつくチーフになりかっただけ。B子の贈り物って、賄賂じゃないの?

(平社員さん/ 21歳)

・同僚のB子が、店長にやたらとプレゼントを贈った
・営業成績がよいわけでもないのに、B子がチーフに昇進した
質問
贈り物が「賄賂」と見なされるのは
公務員だけ

  どこの世界にも、上司のご機嫌をとってかわいがられようとする人はいるものです。でも、プレゼントの力で昇進してしまうなんて、納得できることではありません。平社員さんが怒るのも、もっともです。でも残念ながら、B子さんや店長を犯罪として裁くのはムリ。B子さんが店長に贈ったものは、賄賂ではないからです。
賄賂とは、自分を優遇してもらうなど、不正な目的のために贈る金品のこと。賄賂のやりとりをすると、贈った側は贈賄(刑法第198条)、受け取った側は収賄(刑法第197条)の罪に問われます。ただし、贈賄罪・収賄罪が適用されるのは公務員だけ。今回のケースでは、B子さんも店長も公務員ではないため、チーフの座を手に入れるためのプレゼント攻撃も、賄賂とは見なされないのです。
でも、スタッフの昇進などの「人事権」を持つ店長が、プレゼント攻撃に負けてB子さんをえこひいきしたのは許されることではありません。会社の就業規則で裁かれる可能性があります。まずは、会社の就業規則を調べてみましょう。「職務上の金品の授受の禁止」や「職場の秩序を守ること」を定めた規定があるのが通例です。部下から高価なプレゼントをもらったり、人事権を乱用したりすることは、これらの規則に違反する行為です。店長の上司などに報告すれば、店長は何らかの懲戒処分(会社からの制裁)を受けることになるでしょう。B子さんも、配置替えは免れないでしょう。会社からチーフ昇進は取り消されるでしょう。

質問
弁護士・後藤法律事務所所長
後藤 邦春

裁判官を15年間務め、1989年より民事専門の弁護士に転身。帝京大学にて法学・労働法の講師を担当するなど、若い女性の「法的トラブル」相談者として活躍中。ペットは猫派。