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法的トラブル相談室-第67回-

法的トラブル
お金に仕事に恋愛問題、そんな日常のトラブルを解決する法律のなるほど。後藤弁護士がズバリ解決!

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質問
面接に行った私に、店長からの電話。
採用だと思ったらデートの誘いかよ!?
イラスト

  もっと給料のよいお店に移りたくて、最近、3、4店の面接を受けました。どこも条件が合わずに不採用だったんですが、問題はAという店の店長。面接を受けた数日後から、「食事に行こう」とか「二人で会おう」とか、誘ってくるんです。「彼がいるから」って断っても電話をしてくるのをやめなくて、ちょっとコワイ感じも……。よく考えると、その店長は私が面接のために出した履歴書で連絡先を知ったはず。いくら採用の責任者だからって、個人情報のこんな使い方って、アリ? これってセクハラじゃないの?

(シューカツ女さん/ 21歳)

・面接を受けた店の店長からデートに誘われた
・断っても、電話をかけてくるのをやめない
・店長が自分の連絡先を知ったのは、面接の際に提出した履歴書を見たから
質問
個人情報を、本来の目的以外に
使ってはいけません

  名前や生年月日など、個人を特定することができる情報を「個人情報」と言います。個人情報は慎重に守られなければならないもので、法律で取り扱い方などが決められています。
面接の際に提出する履歴書には、個人情報がてんこ盛り。名前や生年月日はもちろん、住所や電話番号といった情報が書かれ、顔写真まで添えられています。採用担当者であれば、当然、入社希望者の履歴書に目を通すことになりますが、それはあくまで採用のため。本人の許可を得ずに、採用以外のことに個人情報を利用することは許されません(個人情報の保護に関する法律第16条)。シューカツ女さんが訴えれば、この店は違反行為をやめるように大臣から勧告を受ける可能性があります。そして勧告に従わなければ、懲役や罰金の可能性だってある能性だってあるのです。店長がオーナーでなければ、店を経営する会社などに事情を話し、店長を注意してもらうとよいでしょう。
店長をしかってくれる人がいない場合は、彼がしていることが法的に問題であることを教えてやりましょう。店長とシューカツ女さんは上司と部下ではないので、セクハラやパワハラは成り立ちません。でも、電話の内容が人を脅すようなものであれば脅迫罪(刑法第222条)、繰り返しかけてくる場合はストーカー行為にあたる可能性も(ストーカー行為等の規制等に関する法律第2条)。また、しつこい電話は不法行為と見なされ、慰謝料の支払いを命じられる場合もあります(民法第709、710条)。

質問
弁護士・後藤法律事務所所長
後藤 邦春

裁判官を15年間務め、1989年より民事専門の弁護士に転身。帝京大学にて法学・労働法の講師を担当するなど、若い女性の「法的トラブル」相談者として活躍中。ペットは猫派。