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法的トラブル相談室-第37回-

法的トラブル
お金に仕事に恋愛問題、そんな日常のトラブルを解決する法律のなるほど。後藤弁護士がズバリ解決!

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質問
友達と泊まった温泉宿に近所の養鶏場から悪臭が……。
こんなのサギじゃない?
イラスト

  友達との温泉旅行。ガイド本やHPで安くてよさそうな旅館を探して予約し、行ってきました。源泉掛け流しの湯に豪華な懐石料理、眺望バツグンの広い客室におしゃれな浴衣。たしかに宣伝していることにウソはなかったけど、すぐ近くに養鶏場があるとかで、とにかく臭い。露天風呂も臭いし、客室の窓を開けたら、雰囲気も料理の味も台無し。なんだかだまされたような気分でした。こんなニオイがするなんて知ってたら、絶対に泊まりたいなんて思わなかったはず。宿泊代、返せ~!

(21歳/鼻炎になりたかったさん)

・ガイド本やHPで調べて温泉宿を予約した
・設備やサービスは宣伝どおりだったが、近くに養鶏場があるため、悪臭がした
・近くに養鶏場があることは、ガイド本などに載っていなかった
質問
周辺の環境も宿の価値の一部。事実を表示しないのは問題

  温泉宿の場合、設備やサービス、良好な環境、雰囲気など、すべてを総合したものがその宿の価値となります。悪臭の中で料理や入浴を心から楽しめる人がいるでしょうか? せっかくの眺望も、悪臭とセットではすばらしさが半減するのではないでしょうか? 
宿側としては、近くに養鶏場があって臭いことを既に知っているのですから、告知したり表示したりする義務があると解されます。
ガイド本やHPで旅館について宣伝している内容に、たしかにウソはありません。しかし、イヤなニオイは宿としての性能が不完全ということになりますから、ガイド本などを制作した時点で近所に養鶏場があったのなら、事実をきちんと表示する義務があると解されます。宿そのものは完璧であっても、周辺の環境に問題があれば、宿泊施設としての価値が下がるのは当然のこと。サービスを含めた、宿としての施設全体の欠陥ということができます。
ニオイの感じ方は人によって違い、客観的に判断するのが難しいもの。でも、養鶏場のニオイは、「悪臭防止法」にいう「特定悪臭物質」のひとつです。つまり、「養鶏場=イヤなニオイ」という感覚は社会通念として成り立っているということです。万が一、宿の人が「自分たちにとっては悪臭ではないので、本などに表示する必要はないと思った」などと開き直っても、言い分が通ることはないでしょう。

質問
弁護士・後藤法律事務所所長
後藤 邦春

裁判官を15年間務め、1989年より民事専門の弁護士に転身。帝京大学にて法学・労働法の講師を担当するなど、若い女性の「法的トラブル」相談者として活躍中。ペットは猫派。