戻る

法的トラブル相談室-第23回-

法的トラブル
お金に仕事に恋愛問題、そんな日常のトラブルを解決する法律のなるほど。後藤弁護士がズバリ解決!

バックナンバー

質問
予約していた美容院で、
2時間も待たされた!
イラスト

最近人気のB美容院でカットしてみたくて、予約の電話をしました。人気があって込んでいるうえ、完全予約制なので、予約がとれたのは電話をした日から3週間後。ずっと楽しみにしていたので、当日は、予約した時間の5分前に美容院へ行ったんです。そしてそのまま、ずっとずっとず~っと待たされて、やっと名前を呼ばれたのは、予約した時間の2時間後。予想外の待ち時間の長さに、こっちはもう、カットを始める前にぐったり。何のために予約して3週間も待ったのかわかりません。こんなの、契約違反だよね? B美容院、高いカット料金、返せ!

(24歳/ひたすら待子さん)

・美容院は完全予約制
・予約した時間に行ったのに、2時間待たされた
質問
完全予約制である以上長すぎる待ち時間は問題

美容院とお客の間には、「女優の○○さんみたいな髪形にしてください」「わかりました、任せてください」といったような委任契約が結ばれています。本来なら、この契約に時間に関することは含まれていません。
 でもB美容院の場合、「完全予約制」とうたっているところが問題です。完全予約制である以上、「予約していただいた○時にはカットを始めますね」と、時間に関しても約束したことになるからです。
 実際の美容院の仕事は、「お客一人にかけるのは何分まで」などと決められるものではないでしょう。また、話し好きなお客につかまってしまうこともあるかもしれません。でも、お客にしてみれば、「予約した時間には必ずカットが始まる」と思うのが普通。5分、10分の待ち時間なら社会的に許される想定の範囲内といえますが、いくらなんでも2時間は長い!カットがどんなにすばらしいできばえだったとしても、この待ち時間はさすがに契約違反とみなされるでしょう。つまり、ひたすら待子さんはB美容院の債務不履行(民法第415条)に対し、損害賠償を請求することができるということです。
 また、開始が2時間遅れるということは、終了も約2時間遅れるということ。たとえばひたすら待子さんが美容院のあとに仕事の予定を入れていたとします。そしてそのことを美容院側も知っていながら、2時間の遅れを出してしまい、そのせいでひたすら待子さんが仕事を失った……なんてことになった場合、店側にはひたすら待子さんが失った収入の分まで補償する責任が生じてきます。

質問
弁護士・後藤法律事務所所長
後藤 邦春

裁判官を15年間務め、1989年より民事専門の弁護士に転身。帝京大学にて法学・労働法の講師を担当するなど、若い女性の「法的トラブル」相談者として活躍中。ペットは猫派。