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法的トラブル相談室-第22回-

法的トラブル
お金に仕事に恋愛問題、そんな日常のトラブルを解決する法律のなるほど。後藤弁護士がズバリ解決!

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質問
同性の副店長の
いやらしい視線が痛い!
イラスト

今のお店に移って半年。入ったばかりの頃から女性の副店長にかわいがってもらい、お仕事は順調。
でも、最近ちょっと気になるのが、副店長の態度。さりげなさを装って身体に触れてきたり、やたらとお茶や食事に誘ってきたり。この前なんて更衣室で着替えていたら、「かわいい下着ね?」なんて声をかけてくるんです。
女同士のよくある会話かもしれないけど、彼女の場合は、なぜかすご~くいやらしい感じ。あれは絶対、私に気がある!と思うんです。先週も飲みに誘われて、コワいから適当に断ったら「そう、じゃあ来週から鹿児島支店に行ってもらおうかな」なんて言いだすし……。
冗談のつもりかもしれないけど、一瞬、汗が出ました。これって、セクハラですよね!? そろそろガマンの限界なので、何とかしてほしい! 相手が同性でも、セクハラは成立するの?

(25歳/東京店にいたいのさん)

・同性の副店長が身体をさわってきたりする
・飲みの誘いを断ったら、異動をちらつかせた
質問
相手が同性でもセクハラは成立します

「セクハラ(セクシャル・ハラスメント)」の定義は、「相手がいやがる性的な言動をし、その対応によって、仕事面での不利益を与えたり、就業環境を悪化させたりすること」とされています。だれかのある行為や発言がセクハラかどうかを判断する基準は、被害者にあたる人にあります。このケースでは、東京店にいたいのさんが副店長の行為や発言を不快に感じているのですから、それだけで十分。副店長のしたことは立派なセクハラ、ということになります。東京店にいたいのさんは、副店長の不法行為(民法第709条)に対し、慰謝料などを請求することもできます。この場合、加害者が同性か異性かは、まったく関係ありません。 ただし、この二人の立場が逆だったら話は変わってきます。セクハラはおもに、社内での地位が上の人が地位を濫用して、下の人に対して行うものなのです。副店長は鹿児島への異動をちらつかせて、東京にいたいのさんを思い通りにしようとしたのがその典型例です。でも、東京店にいたいのさんが自己の社内での地位を利用して副店長を思い通りにあやつる切り札はありません。
では、平社員が課長に抱きついたり、部長が専務を押し倒してキスしたりするのは罪にならないのか?といえば、そんなことはありません。強制わいせつ罪などの犯罪に問われることになります。また、このような行為は職場の秩序を乱す(風紀を害する)ということで懲戒処分の対象となります。

質問
弁護士・後藤法律事務所所長
後藤 邦春

裁判官を15年間務め、1989年より民事専門の弁護士に転身。帝京大学にて法学・労働法の講師を担当するなど、若い女性の「法的トラブル」相談者として活躍中。ペットは猫派。