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法的トラブル相談室-第8回-

法的トラブル
お金に仕事に恋愛問題、そんな日常のトラブルを解決する法律のなるほど。後藤弁護士がズバリ解決!

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質問
「社内恋愛禁止」を破ったら減給!?
みんなだってしてるのに~!
イラスト

私の会社は、社内恋愛厳禁。就業規則にもキッチリ書いてあります。でも、実際に社内恋愛ゼロの会社なんてあり得ないですよね?
というわけで、私は今、同じ会社で働いている彼と付き合っているんですが、なぜかそのことが上司にバレちゃったんです。急に会議室に呼び出され、さんざん説教されたうえ、なんと減給処分にする、と言われました。
説教ぐらいはガマンするけど、減給はひど過ぎ!会社サボってデートしてたわけじゃあるまいし……。それに、私以外にも社員同士で付き合ってる人はたくさんいるんです。不公平だ~!

(23歳・給料全額よこせさん)

・就業規則を破って、同じ会社に彼がいる
・彼との付き合いがバレて減給に
・社内恋愛をしている人はほかにもいる
質問
規則違反は処分されて当たり前。ただし、不公平な処分はNG

会社には、職場のさまざまなルールを定めた「就業規則」があり、従業員には就業規則を守る義務があります。就業規則に違反した場合、その社員は戒告(かいこく)(職務上の義務違反などについて厳しく注意すること)、減給、出勤停止、解雇などの「懲戒処分」を受けることになります。つまり、就業規則に「社内恋愛禁止」という項目があるなら、それに違反した社員が何らかの処分を受けるのは仕方のないことなのです。残念ですが、減給されることになっても文句は言えません。
ほかにも社内恋愛をしている人がいる、ということですが、会社側の管理職の人などはそのことを知っているのでしょうか? 知らない場合は、当然ですがその人たちを処分することはできません。つまり、結果的に「バレなければいい」ということになるわけです。
ただし、給料全額よこせさん以外の人に関しては、会社側が社内恋愛を知りつつ黙認している、となれば話は別。会社側が従業員を処分する際、その理由や処分の内容は、すべての社員に対して平等に当てはまるものでなければなりません。これを「平等取扱いの原則」といいます。ほかの人の社内恋愛は許されているのに、給料全額よこせさんだけは許されなかった、という場合は「平等取扱いの原則に反する」ということを理由に、会社側に抗議する余地があるでしょう。
また「これまでは許してきたけど、これからはダメだ!」ということで、給料全額よこせさんが、処分される社員の第1号になる、というケースの場合でも、減給は行き過ぎ。まずは戒告程度でおさめるのが正当でしょう。

質問
弁護士・後藤法律事務所所長
後藤 邦春

裁判官を15年間務め、1989年より民事専門の弁護士に転身。帝京大学にて法学・労働法の講師を担当するなど、若い女性の「法的トラブル」相談者として活躍中。ペットは猫派。