レディコミ人生劇場
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第17回『時の埋み火』の巻
2001年もいよいよ大詰め! の今月は レディコミ界で忘れてはならない重鎮、伊万里すみこ子先生の「時の埋み火」(コミックアムール1月号/サン出版/定価400円)をご紹介します。

 物語はひなびた温泉街の旅館の送迎バスが街道をジョギングしているレオタード姿の主人公弥生を追い抜くところで始まるわ。バスから降りてきた旅館の若旦那エイジはどうやら弥生の元同級生で、しかも弥生のカレみたい。2人は仲がいいのか悪いのか、お互いをコキおろしながらも、結局は河原でくんずほぐれつ始めちゃうの。この時のセクシー描写 のやらしさには脱帽よ!レオタードの上から責める、そのことをリアリティもって描けるのは伊万里すみ子の画力あってこそ!「レオタードの中、おもらししたみたいにグシュグシュだよ」のセリフがやけにリアルに私たちの股間を濡らすのです。

 ことの終わったあとの2人は来るべき同窓会について会話。「高杉も来るらしいよ」とのエイジの言葉に胸おどらせる弥生。高杉は弥生の初恋の相手なのだから!!
 2人の会話で弥生とエイジの結婚が反対されているらしいこと、しかもそれが弥生のスナック経営が原因らしいと解っておいらは思わず「ムッ」っとくる。スナック経営のどこが悪いんじゃい!そんな男捨てて、クラス会で会うハズの初恋の男にアタックせんかい!と、この時点でかなり主人公に感情移入のおいら。しかし、村に向かってくる高杉の過去を読んでいると事態はそう簡単じゃないと解ってくる。高杉はなんと中学生のとき、赴任してきた女教師に逆レイプされ、不愉快なひと言に彼女を殺してダムへと投げ込んでしまった過去があったのヨ~!!それは事故扱いとなって、彼は幸にも(!?)罪に問われなかったんだけどね。
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過去に捉われた高杉と現実に満足できない弥生が出会ってしまったとたん過去にひきもどされ、当然のように肌を合わす。コレがまた、やらし~描写 でネ~。やっぱ元同級生ってシチュエーションが、近親相姦的フンイキをたたえているのヨ。昔机を並べていた子たち同士がそんなことするなんて…それだけでもえちゃうよね!

 ただし物語は「何もそこまで…」ってカンジの悲劇的結末を迎えてしまうの。結局幸せになれなかった3人、今となってはどんな形であれむつみ会い、たわむれていた姿がただ愛しい…って感じの物語なんだけどね!

 とにかく伊万里マンガの秀逸なことは奇妙な所帯臭さとリアリティ。イメージで単純化された田舎や「どこにでもある町」じゃなく、必ずどこかの固有の名前と風俗を持った土地の匂いを描いている点なんだ。土着的な同級生同士の対人関係やセックスが「きっとこうだよね」ってカンジで描かれていて、それを見ている私たちに自分の故郷や初恋のことを思い出させる力を持っている。それはつまり、伊万里先生が「現実」を観察し描写 できる稀有な作家だからだと思うんだけど。

 みんな!是非一度伊万里マンガを読んでみてほしい。セックスって単にキレイなだけのファンタジーじゃなく、悲しみや、イヤラシサや過去や年齢、全てをぶつけあう、すごいシリアスなものなんだよね。相手の老いやシワやたるみ、匂いまでも抱けるようになったら一級品!女だってそーゆーカラダになってなお、自信を持って男の前で脱げたら一級!
そしてそんな悲しみや、生活感と一体のセックスを描ける伊万里先生も一級なんだなァ。
 伊万里すみ子といえば明るいお色気と庶民感覚とハッピーエンドってカンジもあるけど、本作は土着的人間関係とエロスに漸近したレアな作品!(アムールならでは♪)
 ぜひ一度読んでみて下さ~い。
で、来年はキミもワタシもこんな濃い愛をきっと手に入れようね!
■さかもと未明
OLから漫画家へ。レディースコミック、エッセイ等各誌で連載を持ち、最近「文學界」で小説デビューも果たす。著作は「ゆるゆる」(マガジンハウス刊)「だって幸せになりたいんだもん」(朝日ソノラマ刊)等多数ありのスーパーお姐さん。