レディコミ人生劇場
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第16回『ネハンの瞳』の巻
随分寒くなってきたよネ~。みなさん元気?冬こそ心とカラダを暖めてくれるレディコミ!!ってコトで、今月はレディコミの大御所の一人、井出智香恵先生作品、「ネハンの女」(メイ・12月号)のご紹介です。

 主人公沙良は、大物政治家 湖美沢剛造の娘だけど、堕落しきった生活を続けている、何故なら父親は野心のためなら妻も子も踏み台にして構わないという男、沙良の母はその悲痛さに絶望して自殺したし、前妻とその息子は家と財産を奪われ、投身自殺に追い込まれたの。今や政治家として成功した湖美沢は毎日のように、美しい女たちを家に呼びつけて色欲にふけっている。沙良はそんな父親への憎悪のゆくあてを思い出せず、毎日カードゲームで夜の相手を探すような日々を送っているの。

 そんな沙良が憧れてるクラブ歌手がいる。その名はナタリー・狩野。トルコ風の衣裳に身を包んで歌う彼女に沙良は癒しを求め、毎夜男たちを引きつれてそのクラブに通 っていた。けれどナタリーはそんな沙良に言う。「私の歌をセックスへの前奏曲にするなんて、屈辱よ」

 ショックを受け、ナタリーに認められようと男たちと手を切ろうとする沙良。怒った男たちにレイプされそうになる沙良をナタリーは助けてくれる。「ちょっと腕に覚えがあるのよ」と軽々と屈強な男たちをなぎ倒すナタリーは一体何者!?
レディコミ
女同士であっても構わない、とナタリーと一夜を共にした沙良は真の愛の歓びを知るの。愛をきっかけに変わっていく沙良。父親が汚れているからって自分も汚れる必要なんかない、自分なりに生き直せば幸せになれんだって…。

 けれど運命はイジワル、ただ幸せになるには、2人とも暗い情念を背負い過ぎたわ。ナタリーは、ある男への復讐のため生きてきた女でクラブ歌手は仮の姿。沙良にも政略結婚を迫る野心に汚れた人たちの魔手が迫ってくる…。やがて明らかになるナタリーの正体。けれどその時もう全てはあと戻りできない状態だった…! う~ん、読みごたえタップリ85Pでね、昔のレディコミはこんな風にページの多い大作がいっぱいで楽しかったんだヨー。そのころこういうミステリーを描かせれば一級だったのが井出先生で、本作は先生の本領発揮という感じ、久々に読みごたえのある一作でした。

 こーゆー作品見るといつも思うのは、当り前なんだけど「愛に勝るものナシ!」ってコト!お金があっても、地位 があっても、心が汚れてしまったらちっとも幸せじゃない、何もなくて、一からやり直しでも、たとえひとりぼっちで子供を育てることになっても、信じられる相手と心を交わし合った一瞬があればきっと強く生きられるハズ!! そんな素直な心を取り戻せるからレディコミはいいんですヨ~。なんてゆーか、日々は世知辛くてつい、ココロがヨゴレになりがちじゃない?でもこういう作品の中で不幸に負けず人生を切り開こうとする主人公見ると元気づけられちゃうんだよね。

 特にこの作品はレディコミにありがちな
「男に全てを委ねてハッピー!」的な結論じゃないのがいい!女は女で自分で必死に生きようとし始める。だから感動するんだナ。

 それにしても「ナタリー」ってキャラはいいんだよ。種明かししちゃうと、性転換した女の人で、元は男なのよ。だから両性具有的っていうか、主人公を守る強さを示しつつも、女心を傷つけるマッチョイズムじゃない、優しい包容力を示してくれるの。コレって理想の恋人の姿だよね。しかも美しくて背が高くて…。セックスは十分に楽しませてくれるのに妊娠の心配もない。ここぞという時のために、実はイギリスに冷凍した精子を保管してあるなんてのもイイ!つまり生殖力も快楽も力も美も、全てを手にした、現代医学の粋みたいな要の存在なんだよね。

 こんなお姉様いたらいいナァ…と思うだけで楽しめる本作は必見! 私はですネ、いつかナタリーみたいな女になれるよう、女磨きに精進しまっせ!てぃんくる読者のみんなは女であるだけじゃなく、お金を稼ぐことで「男」にも近付いた存在。もしかしてみんなもナタリーになれるかもしれないんだよ!だから是非ガンバって下さい。応援しとるで~!風俗でお金稼いで、キレイになってレディコミ片手い美しいココロは失わない。なんかそーゆーの女の花道だと思うんだよね! てゆーコトで、これからもてぃんくる片手にガンバレ!ココロが熱ければ、寒い冬もちっともこわくないハズさ!
■さかもと未明
OLから漫画家へ。レディースコミック、エッセイ等各誌で連載を持ち、最近「文學界」で小説デビューも果たす。著作は「ゆるゆる」(マガジンハウス刊)「だって幸せになりたいんだもん」(朝日ソノラマ刊)等多数ありのスーパーお姐さん。