レディコミ人生劇場
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第5回『朝顔の姫君』の巻
悠ちゃん元気?お手紙ありがとう!最近未明はとってもハッピー。だってみんながお手紙くれるんだもん。楽しいページを作っていこうと思っているので、どうぞこれからも応援してね!
 さて今回は、あたちの大親友でもあるレディコミ作家の榎本由美ちゃんをご紹介。彼女は、レディコミの若手の中ではピカ一の巧さを誇る絵師。いつも流麗な描線と、ゴージャスなストーリーで読者を酔わせているんだけれど、その素顔は意外にも、面倒見のいい、すごく優しいママさまなのだ。
 けれど、只のママさまではないのは当然!いつもボンデージや、赤いブラジャーが透けて見えるシースルーのセクシーな衣装に身を包んで、子供のトキオを背負っているのだよ。ダンナがまたおもしろい人で、パンク歌手の会社員!いっつもおもしろい冗談真顔で連発してさ。いや~、榎本家のことは、是非みんなにいつかゆっくりレポートしたい。本当に素敵な一家なのだ。
 んな訳で、榎本由美さんの奔放かつ愛情にあふれたキャラクターはまさにレディコミ界の宝!あたちは彼女を姉と呼んで、日々お慕い申し上げているのですよ。
レディコミ
で、彼女の漫画なのだけど、最近の名作である、『朝顔の姫君』を紹介しよう。これはワンツーマガジン社というところから出ている、毎月違うテーマで編集されている枕本(枕みたいに厚い、変形B6判の雑誌ね)、「コミック源氏恋物語」に出ていた、いわずと知れた源氏物語の漫画版。
 おもしろかったのは、非常に処女的な清らかなイメージで語られる朝顔の君を、実はいろんな男とセックスしまくって性欲処理する、すごく現代的なキャラとして描いていたこと。
 彼女は源氏の浮気性を知っていて、『寝てしまったら飽きられてしまう。けれど寝ずにすませたら、私は手に入らなかった女として、永遠に源氏に記憶される……』と考え、恋心にうずく体のほてりを冷ますため、毎夜身分の卑しい男達に、体を預けるの。ね。なんだか伝言ダイヤルで男漁りする、田舎の優等生みたいな切なさがあるでしょう?でもこれを読んであたちは、もしかしてまさに朝顔の君ってこんなだったかも、と思ってしまった。女ってものはいつの時代も変わらない。そんな女の普遍性を、榎本は見事に作品にしたなーと感心したの。
 しかも只ドロドロ描くのではなく、すごくロマンティックな漫画にしているのが榎本の筆力よ。すごく納得の話だから、もし手に入れられたら読んでみてね。
 女が強くなったとか、時代は変わったとかマスコミは騒ぐけど、そんな簡単でない、普遍的な「女」が、優れたレディコミには描かれているの。だからあたちはレディコミがやめられないんだなー。本当にいいですよ、レディコミ。みんなもいい作品、いい作家を発見したら是非教えて下さい。こんな作品が読みたい、みたいな希望もね。そしてみんなして、21世紀のレディコミシーンを作っていこう!もしかしてこのページが、未来のエロスを作っていけますように・!
■さかもと未明
OLから漫画家へ。レディースコミック、エッセイ等各誌で連載を持ち、最近「文學界」で小説デビューも果たす。著作は「ゆるゆる」(マガジンハウス刊)「だって幸せになりたいんだもん」(朝日ソノラマ刊)等多数ありのスーパーお姐さん。