カシコイおもてなし
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娼婦の教え(2/2)

具体的には、客に恋をしているような素振りをし、ちょっとのことでも大げさに喜んでみせ、頭のよさを思わせる冗談を言う。

  相手が迫ってきても、すぐには従わず、少しの抵抗や恥じらいを見せる。
「じらし」はいつの時代も有効ってことです。

  その最中に大きな声を出して喜びを表現する。
しかし、終わったら、また恥じらい、照れくさい表情をする。

  最初から最後まであっけらかんとしたのも悪くはないですが、どっちが受けるかと言えば、恥じらいみたいなものをうまく演出した方が受けますし、相手によってこれを使い分けられれば完璧。

  いいセリフの例も出ています。

「奥様が羨ましい。いつでもあなたにかわいがってもらえるんですもの。さぞかし奥様はお美しいんでしょうね」

  ここまで言うと嘘くさいですし、客のプラバシーに踏み込むのは慎重さも必要ですが、「そんなことはないよ」と言いながら、悪い気はしない。
結局は自分が褒められているわけで。

  風俗店に来て、妻の悪口を言う客もいるものですが、だからといって、「ひどい奥さんですね」と言ったら、急にむかつく人もいますから、こういう場合は同調しない方がよろしい。

男が褒められたいパーツを褒めろ

そして、最後はお決まりの「客に惚れるな」という教えです。
どうせ客は金で女遊びをするような男なのだから、信用するだけ無駄。
金がなくなったら、こっちから愛想を尽かすべし。

  そう言いながらも、稀には、天命によって幸運な出会いがやってくることもあって、そういう時は過去のことを忘れて、平和に暮らすとよいとも教えています。

  娼婦として生きるも、そこから離れるもどちらもよし。
結局、客がいろいろであるのと同時に、風俗嬢もいろいろ。
とっとと辞めて幸せになる生き方も、一生この仕事をやっていくことを幸せとする生き方も、すべては個人が決めることです。

プロフィール
文 = まつざわくれいち/1958年生まれ。『エロスの原風景』(ポット出版)、『風俗お作法』(小社)など著書多数。 イラスト = 友沢ミミヨ

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