カシコイおもてなし
カシコイおもてなし

バックナンバー

男性の草食化(2/2)

20代後半の編集者の証言。
「前の彼氏がそういうタイプだったんですよ。仕事柄、締切直前の一週間かそこら会えないのはしょうがないじゃないですか。自分だってそうなのに、こっちが忙しくて会えないと、すぐにそういうことを言う。そのセリフ自体もウザいし、自分勝手なのが腹立たしくてこっちから別れました」
「自分で言ったことは?」
「ないです。それを言ったら今度は自分が困るじゃないですか。なのにその彼氏は言う。彼は甘やかされて育ったボンボンだったので、たぶんそれに関係していると思います。他にも“僕のこと好き?”とか、ウザいセリフ連発でしたよね」

  AV嬢の証言。
「言われたことあるー。そんなこと聞かれたって、仕事に決まってんじゃん。そう答えたよ」
「自分で言ったことは?」
「ないよ。そんなことを聞いて、仕事より自分を選ぶって答える男ってヤバいでしょ」

  私もそう思います。

  彼女は自分では言ったことがないのに、「それって、女のセリフ」と男らしく言ってました。女のセリフを男が言う時代です。

  かつては男たちが仕事で忙しくして、時間の有り余った女たちは恋愛に生きるという社会構造があったのに対して、女たちも働くようになり、そこに生き甲斐を見いだすようになったため、立場が逆転した男女関係が生ずるようになったという見方が可能です。

  しかし、相手がいくら忙しくても、そんなフレーズは口が裂けても私らの世代は言わなかったと思うのですよ。

  つまり、単に仕事をする女性が増えたというだけではない変化が男の中に生じている。

  これに対して、若い知人が「それって、草食男子の傾向だと思います」と言ってました。
彼自身は決して言わないのですが、同世代、あるいはそれ以下の世代にそういう傾向が出てきていると彼も認めます。

  セックスにガツガツしていて精力的な肉食に対して、セックスに淡白で何事にも消極的な草食という区分けがされるわけですが、見方によっては草食男子は女性化しているとも言えます。
男性の一部は女性化し、女性の一部は男性化している。

  そもそもなぜこれまでは女性たちは「私と仕事とどっちが大事?」なんて質問をしてきたのか。
そして、なぜ今は男性も言うようになったのか、その答えは次回。

プロフィール
文 = まつざわくれいち/1958年生まれ。『エロスの原風景』(ポット出版)、『風俗お作法』(小社)など著書多数。 イラスト = 友沢ミミヨ

カシおもここまで