突っこませていただきます!
第4回

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消されたモザイクの巻
人間どうしても避けられない問題が、人生のうち何度かこの小さなノウミソを悩ませます。『アソコが見える・見えない』もAV女優にとって最大の問題ともいえるのでしょう。ただ、それについても小室さん的見解があるようで……。
小室カット
5月下旬のスポーツ新聞。他のスポーツ紙は野球が一面だったその日、東スポさんだけが「人気AV嬢・訴える!」なんて見出し。よくよく読んでみると、現在人気のあるAV女優さんのウラモノが出回っちゃったらしいのね。ご本人は「悔しい。一生恨みます」とコメント。AVの大先輩である飯●愛さんに登場してもらって一緒に戦いましょう、ってな記事でした。信頼していた人に裏切られ、裏切ったヤツラに莫大な儲けとなってフトコロに転がりこんだわけでしょう? ご本人にとって、これほど悔しいことはないだろうね。
 AVに出る以前、いや、出た後の方が大きな心理的効果を発揮するのがモザイクだと思う。カメラの前で、画面の向こうでいやらしいことはしてる、けどアソコは見せてないじゃんと言える。本番かもしれないし、擬似かもしれない。でもそれを知っているのは本人と関係者だけで、外部の人間が知ることはない。だから本番だったとしても「擬似だよ。演技でやってるだけで本番なんてやるわけないじゃん」と言える。モザイクって、AV女優にとっての一つの『アンカー』なのかもしれない。
 アンカー。船を停泊させる時に下ろす錨(いかり)のこと。それで船は波に揺られてもその場所を動かされず停止することができる。人間にも『アンカー』ってあると思うんだ。
自分が信じるもの。それがあるから私は私でいられる。何があっても揺らぐことのない、これさえあれば大丈夫なんだと思えるもの。それが『心のアンカー』。
 でもさ、不思議なものでね。現場では大勢のスタッフにアソコを見られ照らされ、オチンP―!がオマンP―!に出し入れされてるところもバッチリ見られちゃってるはずなのに、やっぱり不特定多数の他人に見られるのはどこか心が拒否してるんだよね。不特定多数に見られるためのAVなのに。その不特定多数が支持してくれて出来る仕事なのに「見せろ!」なんて言われるとざけんなヽ(`Д´)ノゴルア! って思っちゃう。
 AVに出ている時って、AV業界が基準になってしまうんだよね。モザイクがかかっていて当たり前、裏が出ないのは当然と思えてしまう。しかも自分は単体女優なんだからしっかりとメーカーに守られていて……。
 離れてみて思った。「井の中の蛙」だったって。特にそれを思ったのは香港へ行った時。向こうの「ヲタクビル」(中野ブロードウェイのようなところ)に連れて行ってもらったら、日本でいう裏ビデオが正規の流通で平然と売られてた。私の友達の女優さんの裏ビデオもあったよ。店頭に置かれてたモニターに彼女の決して美しくないオマンP-!がドアップで映されていてなんともいえない気持ちになった。映画会社のプロデューサーが言ってたよ。「日本からモザイクなしのテープが送られてこない限り、こういう(裏ビデオ)ものはありえない」
 香港で制作されるHビデオの限界も知った。だから香港で撮影されて作られることはおそらくないと思う。見間違っていたとしても映っていたのは日本人の女性だった。
 信頼できる人たちと仕事をする。だから絶対大丈夫。それは間違い。『絶対』なんてありえないもの。一本のAVが出来るまでに何十人という人間が関わってる。その中で女優が会える人なんて、自分の周囲で動いているほんの一握り。周囲の人間が信頼できたとしても、会ったことも話したこともない人たちに自分の信頼をおけるのか? ……違うよね。
 AVに出るって、本当はすごく覚悟のいることなんだよ。何万分の1だけど「裏が出てしまう」可能性も含めて、それを承諾の上で出なければいけないものなんだって、今だから思う。たださ、それを言ってくれる人なんていないし、AV女優を売り出す側の人間がそこまで心配をしてたらAVに出てくれる子なんていなくなっちゃう。今回涙を流した女優さんには、たまたま白羽の矢が立ってしまっただけ。彼女だけじゃない、これまでにだって有名な女優さんの裏ビデオもいっぱい流れてる。いわば『有名税』のようなもの(ずいぶんとリスキーな有名税だが)。
けど、彼女のすごいなって思うところは、それだけじゃ終わらせないと言っていること。まぁ、女優が出来ることなんてはっきりいってたかが知れてるんだけど、そういう気持ちは大切だよね。
 ずいぶんカラいこと言ってるように聞こえるだろうけど、私もそれなりの経験に基づいて言ってることなんですよ。
 もう5年以上前の話になるけど、同じような経験をしたの。インディーズレーベルというものが出来始めた頃、あるインディーズメーカーで仕事をしたのさ。撮影はいたって普通だったんだけど(やけに股間アップが多かったのは覚えてる)、蓋を開けてみたら「モザイクがかかっていない、のと同じくらい薄い消しの」ビデオだった。見た人に「男優の青筋が見えた」と言われた日にゃ、あまりのショックに絶句したもんだ。●ちゃんにも「毛の剃り跡がきたねぇ」なんて書かれたな~(涙)。思えば股間アップばかり狙っていたのも頷けた。その時は憤慨したし、何らかの制裁を加えてやりたかったさ。だけど私自身には何の力もないんだよね。「どうなって、こうなった」という報告を待つしかない。そういうのは女優が出て行くべき問題じゃなくて、相手メーカーと事務所との問題だから。そのための事務所でもあるわけだし。結局そのメーカーのお偉いさんは、別件でお縄になり、そのビデオも警察の指示で回収に。だけどさ、回収なんて出来るわけないじゃん!そんな『お宝ビデオ』をはいそ~ですか、って誰が提出するかっての。一時期そのビデオが5~10万で取り引きされてたっていうもんね。世の中って、世知辛いなぁ~って思ったよ。もし今自分の裏が出たとしても、それは仕方のないことなんだろうなって思うよ。そういう可能性があることをやってきたわけだから。諦め?に近い感覚だけど、今ならそれも納得できるよ。本当に出ちゃったらやっぱり……やっぱりいやだけどね(苦笑)。
 彼女には辛いことだったろうけど、なんとか立ち直って欲しいものですね。出てしまったものが消えるわけじゃない。それを解決できるのは時間と、彼女の中に培われてきた、そしてこれから培われていくであろう彼女自身の『アンカー』だけなんだろう。
「飯●愛」さんもいいけど、手の届かない人より、電話一本で駆けつけるあたしに相談してくれないかしら。●●さ~ん。心のお薬、いりませんかぁ~(笑)。
プロフィール
1975年7月28日生。O型。
幼い頃にアニメを抑制されたためか、大人になってからアニメにどっぷりと浸かっている。
好きなジャンルは宇宙を扱ったもの。「ガンダム」シリーズ、「銀河英雄伝説」、他多数。
かと思えば「ガンバの冒険」も愛していたりする満27歳。
愛機はPCV-RX51。調子悪し。
プロフィール