第16回「風俗で働くすべての女の子に感謝」
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 僕が初めて風俗に行ったのは、今から20年くらい前のことです。僕はまだ高校生でした。バイト先の先輩に連れられて、高田馬場のファッションヘルスに行きました。

 すでに童貞ではなかったけれど、明るいところできちんと女性のカラダを見たのはそれが初めてでした。シックスナインなんてのも初体験で、やたらと感動した覚えがあります。でも緊張と酔っ払っていたせいで遂に発射できなかったのでした。

 

 先輩が連れて行ってはくれたけれど、料金は自腹でした。確か8500円だったと思います。高校生にとっては、かなりの大金でした。

 

 

 それから10年くらいして、僕は本格的に風俗にハマりました。ちょうど風俗ブームと呼ばれた時期でした。性感ヘルス、イメクラといった店が次々と誕生し、風俗業界が新しい時代へと突入していたんです。本当にお店の前にお客さんの列が出来てたりしました。人気のある子じゃなくても、予約を取るのが大変というほどでした。

 その頃に誕生した性感ヘルスは、今までのヘルスとは比べ物にならないような濃厚なサービスで、料金も安い。そして女の子も若くて可愛い子ばかり。そりゃあ、遊びに行きますって。ハマりますって。特に僕が驚いたのが、女の子のタイプです。それまでの風俗は、いかにもワケありという感じの女の子が多かったのですが、この頃から急に普通っぽい女の子が増えてきたのです。昔からの風俗好きは、風俗のアマチュア化といって嘆いたりしますが、普通っぽい女の子の方が好きな僕には、たまりませんでした。

 

 気がつくと僕はずいぶんと風俗にお金をつぎ込むようになっていました。週に2回とか通ったりしました。当時は安月給の会社員だったもので、ずいぶんキツかったけれど、食費を削ったりして頑張ったものです。と、いうか彼女もいたのに。デート費用も、ケチってました。ごめん(笑)。

 結局、その趣味が高じて僕は風俗ライターという仕事につくことになりました。もう風俗という世界が楽しくてしょうがなかったんです。風俗嬢たちが好きでしょうがなかったんです。少しでもその世界に近づきたくって、そして自分の好きな風俗についての文章を書きたくて、会社を辞めました。それからは、もうどっぷりと風俗まみれの日々です。ええ、本当に幸せでした。

 毎日のように風俗店に通い、女の子の話を聞いて写真を撮り、時には実際にプレイを体験してそのレポートを書く。タダで遊べておまけに原稿料までもらえる仕事です。うれしいものですが、それが5日連続、しかも1日に何軒もハシゴするなんてこともありました。さすがに死にそうになりましたね。それでもちゃんとできてたんだから、若かったんだなぁ、僕も(笑)。1999年に『OPEN&PEACE』という本を作った時は、1ヶ月に100人を撮影しました。これもさすがに死にそうになりましたね。でも楽しかった。

 そうやって、さんざん仕事で風俗に行っていながら、僕はお客としても風俗通いをしてました。仕事で行くのと、遊びで行くのはやっぱり違う。そして純粋な客として遊びに行く方が、何倍も楽しいのです。

 

 取材、そして客として遊びに行って、たくさんの女の子と出会いました。多くの女の子は、すぐに業界から姿を消して、それっきりになります。お店の外で個人的に友達になれた子も、引退するとほとんどが連絡を絶ってしまいます。

 みんな上手くやってるかなぁ。幸せになってるかなぁ。昔書いた原稿のファイルなどを見返したりすると、ふと彼女たちのことを思い出します。仕事を始めた頃に知り合った女の子たちなんて、もういい歳なんだよなぁ。僕もかなりいい歳になっちゃったけど。

 

 この間、風俗好きの友人が言ってました。

「風俗がなかったら、ずいぶんつまんない性生活だったと思うよ」

 これは僕も同感。僕はたくさんのことを風俗から学んだ気がします。

 僕は今、よくハメ撮りという手法でAVを撮影するのですが、この時は自分でセックスもしなければいけません。つまり男優もやるわけですよ。で、よく相手の女の子に「クンニが上手い」なんてほめられるんですね(ああ、恥ずかしい自慢だなぁ…)。でも、これも風俗でたくさんの女の子を相手にして鍛えたテクなわけですよ。

 あるいは、女の子に攻められてヒイヒイ言わされるのも気持ちがいいなんてことも、風俗で知ったんですよ。プライベートなエッチじゃ、なかなか出来ないですよねぇ、こういうのって恥ずかしくて。すっかり今は、できるようになりましたけど(笑)。女の子二人に攻められる3Pなんてのも、プライベートじゃ、そんな機会は皆無でしょうしね。

 


いやいや、そういうエッチ面だけじゃないですね。色々な女の子がいて、色んな人生があるんだなぁということも、ずいぶん学んだ気がします。女の子って、つええなぁ。したたかだなぁ、タフだなぁ、なんてことも実感しました。

 そしてなによりも女の子たちの笑顔に、どれだけ力づけられたことか、癒されたことか。料金以上のものを、僕はもらえたと思いますよ(しかし、僕はこれまでに風俗にいくらくらいつぎ込んだかなー。自腹だけで年間50万円は使ってるよなー)。

 風俗で働いている女の子すべて、そしてこれから働こうと思っている女の子すべてに、ありがとう、とお礼を言いたいです。

 

 さて、1年半に渡って風俗業界、AV業界についてお話してきたこの連載も、ひとまずこれでオシマイです。ご愛読、感謝。

 また、どこかでお会いしましょう。


安田理央(やすだ・りお)
1967年生まれ 埼玉県出身 美学校考現学研究室卒業。雑誌編集プロダクション勤務、コピーライター業を経て1994年よりアダルト系フリーライターに。得意なジャンルは、風俗、AV、デジタルエロ、マンガなど。現在、『デラべっぴん』(英知出版)、『BUZZ』(ロッキングオン)をはじめ多数の雑誌でコラムを連載中。著書に『OPEN&PEACE 風俗嬢ヴァイブス』(メディアックス)など。またAV監督、デジタルカメラマン、バンドのボーカリストなどとしての顔もアリ。妻子もアリ。
http://www.lares.dti.ne.jp/~rio/index.html

撮影/安田理央
2003.12.24up

 


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