第14回「風俗に向き合う時、すべての男はバカになる」
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 最近「月刊日本全国オススメ風俗MAP」(芳友舎)というAVのシリーズを撮っています。タイトルからもわかるように、毎月全国各地の主要風俗街を回って、地元の風俗店のプレイを撮影するというビデオです。4月の関西から始まって、九州、関東、北海道、東海などを回りました。もう少しで全国制覇というところです。

 このビデオの主役は当然、全国各地の風俗嬢なのですが、撮り進むにつれ、もうひとつの裏の主役が見えてきました。それは「客」です。と、いうか「風俗好きの男」ですね。

 このシリーズでは毎回、風俗好きのゲスト(主にAV監督やエロ系ライター)を迎えて、その地元の風俗へ遊びに行ってもらい、その感想をカメラの前で話してもらっているのですが、これがとても面白いんですね。みんな目をキラキラさせて体験を話すんです。いかにいい子で、どんなにいい思いをしたか、満面の笑顔で話すわけですよ。当然、いい思いをした人ばかりじゃないわけで、ひどい目にあった人は、もういかに不幸だったかを半ベソかきながら語ります。ハズしてしまったからといって、自腹で遊び直した人もいます。

 また「俺と風俗」を語ってもらうと、もうみんなしゃべることしゃべること。大の大人が大真面目に1時間くらいしゃべり倒すのですよ。でも、どんなに熱く語っても、風俗のことですからね。語れば語るほど、おマヌケな感じになって面白いんですよ。ああ、男ってつくづくバカなんだなぁって実感します。もちろん自分を含めて、ですが。

 

「風俗に向き合う時、すべての男はバカになる」

というのは、僕の作った格言(笑)であります。

 

 考えてみると、風俗以外でセックスの話をすると、どうしても恋愛感情が絡まってきたり、自慢話的な色合いがあったりで、男同士でも無邪気に語り合うことが難しいんですね。お互いバカになって笑いながら語れる下ネタとなると、オナニー話と風俗話につきるわけです。しかも風俗の場合は安くない金も絡んでくるし、当たり外れといったギャンブル的要素もあるので、話のネタには最適なんです。

 風俗ライターである僕は、よく知り合いに「風俗に連れて行ってくださいよ」と言われることがあります。行ってみたいけど、勇気がない、という男性は結構いるんですね。以前、そういう友達(しかも音楽系とか美術系の)を集めて十人くらいで風俗ツアーを決行したことがあります。キミはここ、キミはあそこ、と僕がよさそうな店をセレクトして、あちこちへ連れて行って、その後みんなで集まって飲みながら報告会をやりました。

 いやぁ、楽しかった。バカで(笑)。遊んだ後に、みんなで飲みながら報告しあうのって、すげえ楽しいんですよ。

 

 よく、風俗の仕事を経験した女の子が「男の人のことがよくわかりました」と言います。それは否定的な意味であったり、肯定的な意味であったりするのでしょう。

 前者は侮蔑的な意味で男の「バカ」さに呆れ、後者はいとおしさを含めた意味で男の「バカ」さに気づくんでしょうね。

 

 風俗という場では、女の子だけでなく、男も裸になります。そしてそれは精神的にも裸になるということでもあります。自分の性欲、そして広い意味でのスケベ心をオープンにして楽しむのが風俗という場なのです。そりゃあ、すっぱだかなんですから、カッコつけたって無駄ですよね。ま、そんな格好になりながらも偉そうにしたり説教かます人もいるようですが、そういう人は本当の意味で「バカ」です。本当に頭の悪い人ですね。


 やっぱ風俗の場では、自分の性欲に正直に向かい合わなきゃいけません。

 彼女や奥さんに対しては、自分のスケベ心をむき出しにして接するわけにはいかないことが往々にしてあります。自分のすべてを曝け出すと、その後の生活に支障をきたしてしまうことがあるわけですよ、残念ながら。

 だからこそ、僕らは風俗でスケベ全開のバカになるのですね。

 こういうところですら、バカになれない人とは、僕は友達になれないと思います。

 

 てな感じで、僕ら男は風俗に行く時は、少年のような気持ちになっているのですよ。いや、少年は風俗行けませんけどね(笑)。ほら、少年がおこづかいを握り締めて駄菓子屋とか模型屋に行くような気分なんですよ。

 だからみなさんも、駄菓子屋のおばちゃんのような気持ちで、愛を持って接して欲しいのですよ。

 んー、駄菓子屋のおばちゃんのようにってのは、我ながら萎える表現だったか(笑)。

 


安田理央(やすだ・りお)
1967年生まれ 埼玉県出身 美学校考現学研究室卒業。雑誌編集プロダクション勤務、コピーライター業を経て1994年よりアダルト系フリーライターに。得意なジャンルは、風俗、AV、デジタルエロ、マンガなど。現在、『デラべっぴん』(英知出版)、『BUZZ』(ロッキングオン)をはじめ多数の雑誌でコラムを連載中。著書に『OPEN&PEACE 風俗嬢ヴァイブス』(メディアックス)など。またAV監督、デジタルカメラマン、バンドのボーカリストなどとしての顔もアリ。妻子もアリ。
http://www.lares.dti.ne.jp/~rio/index.html

撮影/安田理央

 


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